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2011年度
パークアベニュー活性化提言
プロジェクト調査報告書
((財)大阪市北区商業活性化協会商店街調査研究支援制度2011年度報告書)
2012年3月
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はじめに−「パークアベニュー活性化計画プロジェクト」策定および公開にかかる調査研究について

 現在北区は、今後2012年までに、JR駅前ビルの建て替え、三越・伊勢丹グループの出店、阪急の高層化、梅田北ヤード地区の大開発など、かつて駅前ビルがつくられた時に匹敵する大変動の時期を迎えます。
  このような激動を前に、商店街としても活性化計画を策定する時期にきており、キタの駅前開発を契機に設立された「(財)大阪市北区商業活性化協会」では、これまで、「大阪市立大学大学院創造都市研究科」と提携を結び、協働して「商店街調査研究支援助成金交付制度」を実施し、すでに7年目の実績となります。2005年度は「老松西天満アートストリート構想」、2006年度は「繁盛亭・天神橋筋商店街調査」、2007年度は「梅田東・中崎・北天満レトロストリート構想」、2008年度は「大阪駅前ビル活性化計画作成調査」、2009年度は「梅田東商店街IT化調査」、2010年度は「北区写真展プロジェクト」を行ってまいりました。(これまでの経緯は、http://www.cckita.jp をご覧下さい。)
 このようなことから、今回は、阪急東中通り商店街振興組合と(財)大阪市北区商業活性化協会・大阪市立大学大学院創造都市研究科が協働することにより、今後の活性化計画を策定・公開するプロジェクトをおこない、ここにその結果をまとめることができましたので、ご報告申し上げます。
 パークアベニュー堂山は、JR大阪駅・阪急百貨店東側にある堂山町交差点から、阪急東中通商店街、パークアベニュー堂山商店街、扇町協会、山西福祉会館を通り、扇町公園の中心に至る重要な通りです。扇町公園のまわりでは、北区役所、キッズプラザ大阪・地下鉄堺筋線・JR天満駅、天神橋筋商店街(天神橋4番街)と北区の中心的施設につながっており、まさに大阪駅から公園に接続する有利な位置にあります。

 本報告では、北区の活性化にあたっては、
@現在投資の進む大阪駅前(阪急、阪神、うめきた、ステーションシティ)
A北区の地域文化・地域商業・歴史の中心である天満・天神地域・天神橋筋地区
とをむすぶ東西交通流動の重要性を指摘し、そのためにもっとも有望な位置にあるパークアベニューの整備・および将来的には拡幅をおこなうことを提言することにより、北区の発展を展望するものです。

T.大阪市北区の現状(略)

U.駅前大開発の直前における北区の商業の現状−大阪=梅田駅から1駅いったところが元気(略)

1.北区の商店街の現状−全国平均からみれば健闘

2.類型化

3.活性化の兆しのある類型

V.なぜ回遊都市キタ構想なのか?−駅から人が広域に流動するオープンなまちづくりの重要性(略)

1.現状認識−大阪市北区は、2011〜2012年までに環境が激変しつつある!(略)

2.地価・地代の理論(略)

3.商業・まちづくりに関しての2つの考え方
駅前のような大開発をおこなう場合に2つの考え方がある。駅前だけで人の流動を閉じて、他に出さないか、外に流動が流れるようにして、まち全体を繁栄させるか、である。
(A)「ターミナルは囲い込んでまわりのまちと別の世界をつくる」(囲い込み型)
(B)「まわりに人が歩いていくことがまちを活性化させる」(まちづくり型)
北区のみならずこれまでの大阪における大規模開発では、「商業の根本は「人の流れを作る」ことである」という面が必ずしも考慮されてこなかった面がある。都市の魅力は個店の集積にあり、そのような「街を歩く楽しみ」が都市を活性化させるという大原則がある。以下いくつかの事例から説明していく。

4.大規模開発と周辺のまちづくり
大阪市の前々前市長(磯村市長)が、「国際集客都市」というテーマを掲げていたときに、筆者が交通論の専門家と研究をしており、そのとき、交通の観点から、大阪の交通行動・特に観光行動は、ある目立った点で、他の都市、特に東京・京都・神戸などと違った性格をもっていることを発見した。
それは、大阪の来訪者の行動は「点」だということである。他の都市は、みな「線」か「面」なのである。大阪は、「国際集客都市」構想の時代に、フェスティバルゲート、大阪ドーム、USJ、WTC、ATC、OCAT、クリスタなど、拠点的開発は沢山やってきたが、そのまわりのまちづくりの段階に入っていなかった。
筆者は、世界的な本当の「国際集客都市」は、「ビッグプロジェクト+まわりの商店街等のストリート」であるといってきた。ヨーロッパのパリ、ローマ、ミラノ、ベニス、マドリード、なんでも良いが、昔のビッグプロジェクトとは、王宮施設であったり、美術館であったり、コロッセウムであったりする。いまでいうと、大規模商業開発やテーマパークである。ヨーロッパの国際集客都市では、こうしたビッグプロジェクトに行き、その後、もう一泊して、回りの商店街でそぞろ歩きできる楽しみがある。これが本当のまちづくりである。他の都市、東京・京都・神戸でも、そぞろ歩きできる道がある。ところが大阪は、点的開発は沢山あったが、そのまわりのまちづくりの連携が少ない。アメ村や堀江は、計画されたものではなく、地元が自然発生的に作り上げてきたものだった。
ビッグプロジェクトは、できたときは勢いがあっても、やがて勢いが衰える。そのとき、まわりのまちができていれば、永遠の繁栄を得ることができるである。まわりのまちづくりをすることが、中心にとっても大切なことなのである。
しかし、これからは、「ビッグプロジェクト+まわりの歩き回れるまち」というまちづくりの法則の後半を本当に真剣に考える時期にきており、特にキタについてはそういうことがいえるのである。以下いくつかの事例から説明していきたい。
《例1》USJ
《例2》フェスティバルゲート
《例3》京都駅ビル(ターミナル例)
《例4》京都・三条通
《例5》東京・渋谷駅(ターミナル例)
《例6》大阪・阿倍野駅(ターミナル例)

5.車交通に対して、ゆっくり「歩くまち」の重要性

《例7》彦根市「夢京橋キャッスルロード」から「四番町スクエア」へ
《例8》松山市「ロープウェイ通り」(坂の上の雲のまちづくり)

6.商業・まちづくりの原則
こうした事例から以下の原則が得られる。
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(1)商業・まちづくりの原則とは、
1)「人の流れをつくる」こと(基本)、
2)しかも、車ではなく、歩いて楽しいまちをつくること、
3)特に、若い人(予備校生、専門学校生、大学生、大学院生)の流動を作ることの重要性、
(2)周辺が繁栄することによって、中心もますます繁栄する、
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ということである。
既述した、商業・まちづくりに関する2つの考え方=(A)「ターミナルは囲い込んでまわりのまちと別の世界をつくる」(囲い込み型)と(B)「まわりに人が歩いていくことがまちを活性化させる」(まちづくり型)について、(A)の典型例というのは、大都市では意外に少なく、上述の京都駅前の例が典型である。その他は(B)が多い。
駅前の大規模開発者にとって、(A)は一見自社のみの利益になると思われ検討する可能性があるかもしれないが、実際は、多くの事例で(B)の方が街が繁栄し、最終的に良いことがわかる。駅前の大規模開発者にとっても(B)の方が長期的に利益があるのである。
それは理論的な裏付けがある。それは、2.の地価・地代の理論から、地価は、必ず中心の駅を頂点としてまわりに広がる傘のような形をしているからである。
したがって、周辺に人が流れ、周辺の価値が高まると、傘の周辺の地価が上昇する。そうなれば、中心部はますます価値が上がるのである。政策(B)によって、中心部はますます活性化する。地価の理論から、囲い込み法(A)よりもまちづくり法(B)の方が、中心部もますます繁栄するのである。

7.住宅地に関して、静かな環境を整備するには?
《例9》中崎・北天満地区
《例10》大阪市・平野区(まちぐるみ博物館+地区計画の例)
《例11》奈良市・ならまち地区(町屋カフェ・ギャラリー+景観形成地区)

8.キタの今後
これまでの検討を総括すると、商業および住宅の立場からは、本来は、
×人を囲い込むのではなく→ ○面的な広がりをもった、歩いて楽しいまちを拡大。
×人が散漫に流れるのではなく→ ○プロムナードとして整備するところは整備する。
×無秩序な開発でさわがしくなる→ ○住宅地は静かに整備。
×好ましくない施設が入ってくる→ ○地域で管理。
などの点が、地域マネジメントとして必要となってくる。北ヤードから人の流れを南方および東方に誘導し、北区全体の商業が活性化し、また住宅地は保全して文化的整備をおこなう構造を作る必要がある。このように新しい流れを地域全体に誘導し、グレーターキタとして活性化・整備できるかどうかが、2011〜2012年までに早急に検討すべき課題であり、そこでは、周辺の商業者、町内会、地域団体のみなさまを含む関連団体の役割が重要になってくる。また、産官学の力を合わせて検討しなければならない。

W.東西流動の重要性(1)−うめきたの構造とレトロストリート構想

1.うめきたの構造と地域・・・東西のメインストリート「賑わい軸」の接続と延長
うめきた計画は、南北および東西のメインストリートによってつくられているが、そのうちの東西のメインストリートは、徒歩客の流動も重要となる「賑わい軸」である。
この北ヤード「賑わい軸」の延長は、現在のヨドバシ北側の通りから、新阪急ホテルの通りにつづく、ここは歩行者流動量の激増が予想される。この東が、若者のまちとして脚光をあびる「中崎町」「黒崎町」をへて天神橋筋である。

2.賑わい軸延伸が、レトロストリート構想
ところが、北ヤード・茶屋町地域から、JRのガードを抜け北区東部へ抜けられる個所は(大通りを除くと)2個所しかなく、他にはない。A地点=NUちゃやまちの通り、B地点=ロフトから抜ける通りの2つのみである。
これが主要なルートの代表であり、特にA地点が、上記の賑わい軸のほぼ延長→NUちゃやまち→JR→済美小学校・中崎町駅横→中崎・黒崎商店街→天神橋筋に抜ける道であり、現在も、個性的な商店の集積が始まり、人の流れができつつある個所である。しかしながら、このままで放置していれば、乱開発になるおそれもある。中崎・北天満地域は、閑静な住宅地との混在地域でもあり、人の流れを誘導して「文化の香り高いまち」として整備するとともに、静かな環境を維持することも大切である。人の流れとともに開発の流れは今後確実にやってくることから、秩序だった地域計画の策定も急務である。そこで、以下のように「梅田東・中崎・北天満レトロストリート構想」を提案した。

X.東西流動の重要性(2)−阪急の東西コンコース構想

 実は、東西軸・東西流動を重視しているのは、うめきただけではなく、阪急も以下の東西コンコース構想で進めているところである。
【資料1】◎「東西コンコースが開通 阪急うめだ本店前、利便性高まる」(日経新聞10月3日)
【資料2】◎「ようやく混雑解消? 阪急梅田本店前の東西コンコース開通」(産経新聞10月2日)

Y.東西流動の重要性(3)−パークアベニュー活性化

1.阪急軸延伸が、パークアベニュー構想
まさにこの阪急の東西軸に接続するところが、パークアベニューである。パークアベニューはその先に扇町公園という大阪を代表する憩いの場所があり、ここへの流動を確保することにより、「うめきた第2期の緑街区」と東西にならべて、北区の「大公園都市構想」「パーク都市構想」となると考えられる。そこで、本報告書では、ここにパークアベニュー拡幅・整備計画を提言するものである。

2.これまでも提案されつづけてきたパークアベニュー活性化計画
現在の大阪市北区商業活性化協会の前身の一つである北区地域開発協議会でも、実に20年近く前から、このパークアベニューに注目し、整備計画を検討してきた。以下にその一旦を紹介する。
【資料3】◎『きた開発』1983年1月 6号(発行:北区地域開発協議会 わたしたちの街づくり) ◎一足早く、扇町<−−>御堂筋を結ぶ遊歩道誕生
【資料4】 ◎『きた開発』1983年1月 6号(発行:北区地域開発協議会 わたしたちの街づくり) ◎東部地域の機能分化を考える−再開発ネットワークの提言−
【資料5】 『きた開発』1984年7月 10号(発行:北区地域開発協議会 わたしたちの街づくり) ◎報告書完成「北区地域活性化のための計画」から
○東部地域の活性化は三つの拠点開発が基本
○望まれる歩行環境整備と交差点整備
○扇町公園の再整備は−東西交流の結節機能を
○公民協力 地区整備の典型として
○2千億円の゛都市再開発事業″国鉄コンテナーヤードとその周辺
○歴史にちなんで周辺整備−真田山公園と楯原橋
【資料6】◎『きた開発』1984年7月 10号(発行:北区地域開発協議会 わたしたちの街づくり) ◎パークアベニュー堂山商店会
【資料7】◎『きた開発』1986年10月 17号(発行:北区地域開発協議会 わたしたちの街づくり) ◎(21世紀の)扇町公園および周辺再開発計画 ◎扇町公園及びその周辺の課題について

Z.大阪市立大学大学院創造都市研究科の連携ととりくみ

1.プロジェクトの経緯
創造都市研究科は、このような設立趣旨から、実践的であり、また、大阪市立大学の多くの部局の中では、ただ一つ大阪市北区に立地しているとの経緯から、北区のまちづくりを応援することに勤めてきた。特に、重点研究として創造都市研究科が立地する大阪市北区を重視している。
北区は、クリエイターや関連の学校が全大阪市の4割から6割が集中しているというポテンシャルを利用し、「創造都市キタ・扇町創造村構想(http://www.cckita.jp/ )」として活性化に取組んできた。
特に、大阪市北区地域開発協議会の姉妹機関である「(財)大阪市北区商業活性化協会」との間に包括提携規約を締結し、北区内の商店街等の団体とともに、調査研究事業をおこなうとことなっており、これまでに以下の通り実施してきた。
1)2005(平成17)年度「老松西天満アートストリート構想」
2)2006(平成18)年度「繁盛亭・天神橋筋商店街調査」
3)2007(平成19)年度「梅田東・中崎・北天満レトロストリート構想」
http://shibata-shotenkai.com/retrostreet/
4)2008(平成20)年度「大阪駅前ビル活性化計画作成調査」
5)2009(平成21)年度「梅田東商店街IT化調査」
6)2010(平成22)年度「北区写真展プロジェクト」
2005年には、古美術商やギャラリーが約80軒集積する老松通りを「老松西天満アートストリート構想」として地元と当研究科をはじめ地元の小学校や芸大等の学校が連携して取組んだ。2006年には、地元商店街や町内会と連携して「繁昌亭及び天神橋筋商店街活性化に関する調査」を実施した。2007年には、戦災をまぬがれた古い家が残る中崎町へ北ヤードの東西のにぎわい軸からつながるルートを「梅田東・中崎・北天満レトロストリート構想」として、地元商店会・町内会と地域に集積する芸術系の大学や専門学校とともに、例えば授業の一環として各種イベントを開催したりするなど、人の流れをつくり地域を整備する構想に取組んできた。2008年度には大阪駅前ビルと連携し「大阪駅前ビル活性化計画作成調査」を実施した。2009年度は「梅田東商店街IT化調査」、2010年度は「北区写真展プロジェクト」を実施した(これまでの経緯は、http://www.cckita.jp をご覧下さい)。

2.東西流動調査(参考資料)
それでは、上記のような「東西流動」とは、現状では、実際にはどれぐらいの規模のものであろうか、以下は、レトロストリートの交通流動を調査した牛場の結果を掲げる(牛場・小長谷2008)。
・Loft側で20代男女が多いのは、想定通りである。
・中崎側で30・40代男性が少ないのは、平日の昼間が要因(想定内)と思われる。
・中崎側で20・30代女性が多い。特に30代女性はLoft側ではそれほど差が無い。
・全体として、中崎側はロフト側に比べて約60%の通行量となっている。
・男女比でみると男性50%:女性70%であり、20・30代女性市場のボリュームがある。
などの点がわかった。
最後に、回遊都市キタ構想という流れを作るデザインを、上記のような、北区商業活性化協会の調査研究プロジェクト等とともに重ね合わせた模式図を最終頁に示す。詳しくは以下ホームページをご覧下さい。

【参考文献】
大阪市北区地域開発協議会『「きた開発の歩み」』各巻。
射手矢武・牛場智・吉川浩(2009)「商店街のマネジメント」(塩澤由典・小長谷一之編『まちづくりと創造都市2』)晃洋書房。
乾幸司(2008)「平野のまちづくり−町ぐるみ博物館」(塩沢由典・小長谷一之編『まちづくりと創造都市−基礎と応用』)晃洋書房。
牛場智・小長谷一之(2008)『レトロストリート調査研究報告書』。
牛場智(2009)「まちづくりにおける地域商業の新しい潮流の分析−都市型商店街を事例とした経験経済モデル(体験型商業)とソーシャル・キャピタル論によるアプローチ」(大阪市立大学大学院博士学位論文)。
木沢誠名・牛場智・吉川浩(2008)「クリエイティブな商業とまちづくり−ミナミ・堀江・中崎町」(塩澤由典・小長谷一之編『まちづくりと創造都市』)晃洋書房。
桐生幸之助(2009a)「都市開発のマネジメント」(塩澤由典・小長谷一之編『まちづくりと創造都市2』)晃洋書房。
桐生幸之助(2009b)「所有権と利用権の多様な形態にもとづく都市再生戦略 ―東京と地方における都市再生の比較の観点から―」『創造都市研究e』第4巻第1号、
http://creativecity-j.gscc.osaka-cu.ac.jp/ejcc/viewarticle.php?id=47&layout=abstract
久保秀幸(2007)「小街路空間がもたらすまちづくり効果について−彦根市四番町スクエアの事例から」『創造都市研究』第3巻第1号(通巻3号)。
小長谷一之(2002)「奈良市・ならまち」『都市研究』第2巻。
塩沢由典・小長谷一之編(2007)『創造都市への戦略』晃洋書房。
塩沢由典・小長谷一之編(2008)『まちづくりと創造都市−基礎と応用』晃洋書房。
塩沢由典・小長谷一之編(2009)『まちづくりと創造都市2−地域再生編』晃洋書房。
日経新聞10月3日
産経新聞10月2日

 

 

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