老松西天満アートストリート構想
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 老松西天満とは?

(1)アートが集積する奇跡のまち−老松西天満地域

 天満地域は、古くは太融寺の寺内町であり、近世の「大阪三郷」が「北組」「南組」「天満組」であったことからもわかるように北区で最も古い街区です。江戸時代の中頃までの街区は寺町以南であり、東海道・山陽道をへて他の地方から大阪に入る旅人は、北野村から曽根崎天神の横を通り、老松通りから天満宮に向いました。老松通りは天神の表参道であり、大阪の表玄関だったのです。

 現在老松町には、古美術、ギャラリー(現代画廊販売、貸し画廊)などのアート関係店舗があわせて80軒前後集積していることで知られています。東京や京都にはこのような街が多く、みな瀟洒で繁華な街となっていますが、大阪では現在ここが代表例で、その意味で奇跡の街といえるでしょう。

(2)集積の歴史

 この集積については研究されており、起源は大正・昭和(戦前)ごろからと思われます。今では区別出来ないが、元来古美術店とは、「古美術商」「茶道具商」「鑑賞用の道具商」の3種類に分かれていたと言われており、その様な形態から移行してきたものと考えられます。集積のイニシエーター(創始者)としては、東洋陶磁美術館(安宅コレクション)・出光美術館など多くの美術館設立にも深く関わり、大阪だけでなく、古美術の世界では無視できない存在であった「平野古陶軒」(現在は弟子筋の和泉玉箒堂さんが立地)がいました。平野古陶軒は、旧大阪市東区(現中央区)平野町で開業していましたが、戦災で焼け出され、1947年に老松町に移ったのです。この弟子筋などが現在のいわゆる暖簾系の店舗になります。平野古陶軒をイニシエーター(創始者)とすると、1979年に開店した「梅田グランドギャラリー」や1962年に開業した貸し画廊の「大阪現代画廊」などがプロモーター(促進者)であり、以後自主独立系のアート関連店舗集積が活発になっていきました。すなわち1982年頃より暖簾系のネットワークにより店舗数が増え、1989年頃より、自主独立系も含めて集積数が増大したといえます(田中2006による)。

(3)アートの都市再生効果

 ところで、都市を活性化しにぎわいをもたらすものとして、世界中の都市で、アートの効果が重要視されるようになってきています(創造都市の理論)。一方、扇町創造村構想でもわかるように、大阪市北区は、大阪市内でも、デザインやアート系の業種の半数近くが集積しているという注目すべき地域です。中でも、老松・西天満地域は、大阪では他に例のないアートの集積のある老松通りを中心とした地区をもち、アートを切り口とした都市活性化の可能性をもっとも秘めている地域なのです。また、東部の中心の一つである天神地域でも落語小屋の計画が進みつつあり、北区の2大中心である大阪駅前地域と天神地域を結ぶ要衝にあり、天神の表参道でもあった同地域に注目があつまりつつあります。一方で、土地利用が不安定化し、個性的な町並みが失われかけているという微妙な状況もでてきています。そこで、扇町創造村構想とともに、いま、老松西天満アートストリート構想というアイデアが進みつつあるのです。

(4)老松西天満アートストリート構想とは

 実は、有名なアートの町である老松・西天満地域も、これまで「古美術」「ギャラリー」「町内会」などの各主体はほとんど交流がありませんでした。そこで、「老松西天満アートストリート構想」を策定、それにより、はじめて、古美術・ギャラリー・地域関係者・大学等専門家(大阪市立大や大阪芸術大)による横断的な組織「老松西天満アートストリート会議」を立ち上げることになったのです。老松・西天満地域をアートをテーマとして活性化するこの「老松西天満アートストリート構想」のもとで、様々な試みが展開されつつあります。

 目下、大阪芸術大学、地元の西天満小学校、北区の教育機関キッズプラザなどとも連携し、アーティスト、大学生、小学生、先生方などの七夕アート作品を展示する「七夕アートストリート祭り」の「七夕アートコンテスト」を企画し進めています。これは、地域の主人公同士が合同して地域活性化について考える初めての試みであり、その精神はアートをテーマにしたコラボレーションにあるのです。

(※)『創造村をつくろう−大阪・キタからの挑戦』(晃洋書房刊、2006年)「第U部第3章 北区の創造的活動と創造的街区」(小長谷一之、田中登、牛場智)より抜粋。

【参考文献】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アートのまちづくり研究会編(2005)『アート拠点調査U』創造都市研究科。

小長谷一之(2005)『都市経済再生のまちづくり』古今書院。

田中登(2006)「専門性の高い同業種集積についての研究−老松町古美術街を例にとって−」(創造都市研究科都市政策専攻修士論文)。




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